Column
コラム

たくちゃんの日常(BFRサイクリング)

トレーニング
著者:川辺拓史

最近「BFRトレーニング(血流制限トレーニング)」を自転車運動に取り入れる「BFRサイクリング」が話題になっています。
加圧は筋トレだけでなく、有酸素運動との組み合わせも効果的であることは以前から知られています。


■「BFRサイクルで痩せる」
論文やコラムを調べていくと、こうした目を惹くテーマが目につきます。
都合の良いところだけ読みたくなってしまいますが、検証データや被験者情報をみると先行研究の多くは、BMIが高い人や運動不足の人を対象にしています。

いきなり否定的な書き出しになっていますが、
研究結果の数値は被験者の体質や生活習慣に左右されやすく、「BFRサイクルで痩せる」と強調する広告は、冷静に見極めが必要です。よく見かけるダイエット商品、広告も一緒です。

■痩せる効果はない?
BFR本来の効果として、血流制限中は手脚の酸素が不足し、筋肉はグリコーゲン(糖)を優先的に消費します。
その結果、運動後に血糖値が下がりやすい状態となります。
研究でも短時間での代謝活性が高まる傾向が立証されており、私自身の体感でも15〜20分で1時間のジョギングに近い消費を感じます。

よって、短時間でグリコーゲンを効率よく消費することができるのは確かですが、ここで消費できるエネルギー量は1日の食事摂取カロリーの一部です。多く見て1食分、場合によっては間食1回分の消費でしょう。
全てのダイエットは結局のところ、[消費]と[摂取]のバランスになります。

■BFRサイクルで期待できることは?
BFRサイクリングでは、筋肉の酸素不足により乳酸や成長ホルモンの分泌が促進されます。
その結果として期待できるのは、

・太もも・下肢の引き締め
・基礎代謝の維持・向上
・抗酸化能力・回復力の向上
・血流改善・美肌効果
などです。

また、後述のインターバルを挟みながら、より長時間使えるのもメリットかもしれません。

■実践法について
先行研究では、かなり高めの圧(200mmHg↑)で行われていますが、これは確実に血流制限がかかる状態を再現するためであり、不快なキツさとなるため実践向きではありません。
BFRトレーニング協会のコラムでも、120mmHg前後でも同様の効果が得られると書かれており、継続しやすさから考えて80~120mmHgで行います。

頻度については週3~4回。

おすすめプロトコルは、1回のBFRサイクリング時間は20~25分間。
「脚の加圧時間は1回5分」を目安に、バンドの付け外しをあわせて次のようなセットを組みます。

① ウォームアップ バンドなし 2〜5分
② 加圧サイクリング バンド装着 5分
③ レスト(軽く流す) バンドなし 1〜3分
④ 加圧サイクリング バンド装着 5分
⑤ レスト(軽く流す) バンドなし 1〜3分
⑥ 加圧サイクリング バンド装着 5分
⑦ レスト(軽く流す) バンドなし 1〜3分
※バンドは毎回外さず、緩めるだけ

■まとめ(結論)
BFRサイクリングは、短時間・低負荷で筋肉と代謝を効果的に刺激できるトレーニング法です。
関節への負担が少ない点も大きな特徴です。
バンドの付け外しが煩わしと感じることもあるかもしれませんが、有酸素運動としては短時間で終了することができ、
効率よく筋刺激を与え、代謝の維持・向上を期待できます。

私自身の実体験では、BFRは1回、2回行っただけでは「その日ちょっと疲れた」「終わった後の開放感が気持ちい」くらいの感覚ですが、怪我した時に数か月間毎日継続したところ、明らかに代謝があがり、ケガからの回復と、筋力・スタミナの戻りが早まるのを感じました。
定期的、継続的に取り入れることで、代謝向上・回復力・体の引き締まりなど、プラスの効果を実感しやすくなります。

筋トレには「オーバーロード(過負荷)の原則」というものがありますが、BFRは低負荷でも筋量、筋力があがる ”加圧ならではの効果”を持っています。


■参考論文

Frontiers Physiology, 2022(BFRサイクルガイド:短時間、低負荷、呼吸苦が少ない)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8963487/?utm_source=chatgpt.com

Christiansen et al.,2019(パフォーマンス向上、Na⁺/K⁺-ATPase、抗酸化能力変化)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6487934/?utm_source=chatgpt.com

Scientific Reports, 2022 (VO₂peak 向上や運動適応の加速)
https://www.nature.com/articles/s41598-022-22852-3?utm_source=chatgpt.com

Frontiers Physiology,2019 (女性におけるBFRサイクリングの効果検証)
https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2019.00810/full?utm_source=chatgpt.com

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